イギリスコロナ最新状況

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昨日のイギリス首相による発表で、2021年5月17日のロックダウン一部解除から1ヶ月が経とうとしている今、6月21日予定だったロックダウン全面解除が7月19日へと延期された。

デルタ株の猛威

ワクチン接種が世界各国に比べて迅速に進んだイギリスにトンネルの出口が見えてきたところで政府は一旦ブレーキをかけた。これはインド型変異株の猛威が奮っており、イギリスのコロナ感染者の増加が急速に進む原因がこのインド型変異株だ。国名で呼ばずに「デルタ」という名称でメディアは報道している。このデルタ株が、イギリスの新規感染の90%を占めている。

今のイギリスでは何が起きているのか、そしてロックダウン全面解除は本当にくるのか。実際にイギリスに住んでいる私たちの感じる観点で、分析、検証してみたいと思う。

何が延期されたの?

すでに5月17日のロックダウン大規模解除で、2家族での室内での会合が許可、ホテル、映画館、子供向け室内遊技場の再開、ウェンブリースタジアムで1万人まで、その他、コンサート会場など人数を制限して開催が可能、そして海外旅行が可能となっていたが、完全なるロックダウン解除ではなかった。

そして、当初2021年6月21日予定されていたロックダウン完全解除では以下の項目が実施され2020年3月以来の通常の生活に戻る予定だった。

  • 結婚式招待人数上限30人ルール解除
  • 室内マスク着用ルール解禁
  • 1mソーシャルディスタンスルール解除
  • 室内ミーティング上限6人ルール解除
  • ナイトクラブ再開
  • 巨大イベント再開

しかし今回のイギリス首相の発表をもって、結婚式30人制限解除と巨大イベント再開だけが6月21日から解禁となり、そのほかは2021年7月19日と延期された。

感染状況

コロナウィルスによる日々感染者数、死亡者数の推移を見てみると、過去1ヶ月半の状況は以下の通り

感染者/死亡者
5月2日 1649/27
5月23日 3180/9
6月13日 7490/8

明らかに感染者数は増加傾向にあり40日で5倍程度増えている。ただし、死者数の増加を抑えているのはワクチンによるものと思われる。

R

(Rとは、ウイルス感染者1人が次に何人に感染させるかを示す「実効再生産数」を意味する。)

イギリスのR状況

2021年3月 0.6-0.8
2021年4月 0.8-1.0
2021年5月 0.8-1.0
2021年6月 1.2-1.4

R=1では、1人の感染者が1人にうつすことで、感染は拡大も終息もしない。R>1、つまり1超になれば、1人の感染者が複数に感染させるため流行は拡大する。R< 1、つまり1未満なら、流行は拡大しない。各国で続く行動制限をどう緩和するかの判断に、この「R」の値が重要な意味を持つ。

Rが1以上となり悪化しているのが明らか。感染者数は増える一方となっている。

イギリスワクチン接種状況

(2021年6月14日現在)

ワクチン接種1回 41,551,201人 (成人全体比78.9%)

ワクチン接種2回 29,792,658 人(成人全体比56.6%)

ワクチンを2回受けてもデルタ変異株によるウィルス感染で死亡者が出るという状況だが、全体的な死者数は日々20人以下と、ワクチンの効果がみられる。政府は2回目のワクチン接種を早急に進めていて、40歳代の2回目接種を7月から6月に前倒ししている。

リモートワーク状況

ロンドン市内の企業は当初予定していた6月21日のロックダウン完全解除からオフィスに通勤するよう従業員に指示していたところもあるが、今回の7月19日までの延期を受けて、大手の金融機関などでは9月上旬までオフィス通勤要請の日付を延期しているところもある。未だにロンドン市内のオフィス街のレストラン内は空席状況が目立つ。ロンドンサービス業の経済回復には金融街の従業員オフィス通勤が非常に大切なものとなる。

経済状況

ロックダウンによる規制でビジネス閉鎖を強いられた従業者の給料の80%を政府が保証する休業手当が2021年9月30日をもって終了する。今回のロックダウン全面解除の4週間の延期にもかかわらず、休業手当の延期は行われない。政府の予算の行き詰まりが見受けられる。

失業率は2019年、コロナパンデミック前は4%前後で、2021年は5%前後とそこまで急激な悪化は見られないが、9月の休業手当終了以降の失業率悪化が予想される。

実際にロンドン市内のハイストリートを歩いてみると、メジャー店の閉店が目立ち、肌で受ける街の活気の喪失感は大きいものがある。

海外旅行

海外旅行が解禁されたが、往復で渡航前3日以内のPCR検査を受けその証明書がないと飛行機に乗れない。金額も£60-100と家族4人であれば£500近い検査料を渡航費に追加と、旅行者にとっては痛手となる出費になる。

そして連日コロナ感染状況の変化で各国が渡航危険区域に認定したり、外したりして、飛行機のスケジュール変更が激しく、空港で何時間も待たされる旅行者や、フライトがキャンセルされる場合もある。直近の2週間ではポルトガル旅行、ジャージー島旅行を断念したという家族の話を聞いた。

これで高まるのが国内旅行需要。イギリス北部のスコットランドは夏の観光地で人気が高い。すでに多くのホテルが8月まで満室で、多くのイギリス人にとってこの夏は、旅行にいけない夏休みとなりそうだ。

まとめ

明日で2020年3月23日のロックダウンから450日。ここまで長くなるとは予想しなかった国民のフラストレーションは絶頂に達しており、爆発寸前のところで、デルタ株の登場、ロックダウン全面解除まで後1週間というところでの更なる延期で、人々の落胆が激しくなっている。

ロックダウン全面解除といってもデルタ株によるウィルス蔓延が急速に進むため、国民の気持ちは晴れない。イギリス国民は2回目の旅行に行けない夏休みを経験しようとしている。フラストレーションが溜まった人々が、失われた時間を取り戻そうと外に出て蜜になると、ウィルスにとっては絶好のチャンスとなり猛威を奮う。まさに悪循環。

政府の補助金は底をつき休業手当はもう出せない。経済を止めることはできない。唯一の救いは、まだ死者数の数がそれほど伸びてないということだ。しかし、死者数の増加は感染者増加から2週間ほど遅れるので、今週あたりからの死者数の数に注目。

政府の補助がなく、経済を止めることはできないイギリスにとって、2021年後半はコロナウィルスをインフルエンザウィルスと同様に「風邪」と一般的に言われる症状として、死者数の増加を抑え、共に生きていかないといけないのかもしれない。


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About the Author: ジゴロッキー

2001年よりロンドンで活動。夢は悟ること。国籍日本。解決方法:時間。

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