

暗黒の世界、イギリスの11月から2月を生き残る方法
ようこそ、暗黒の4か月へ
今日のテーマは、イギリスの11月から2月をどう生き残るか、です。
10月の最終日曜日に時計が1時間戻ると、イギリスは一気に「夜の国」になります。12月のロンドンでは、朝8時近くにようやく明るくなり、午後4時前にはもう真っ暗。スコットランドならさらに短くて、まるで一日がおまけのようです。
しかも空はほぼ毎日グレー。雨は日本のようにザーッと降らず、霧吹きのような細かい雨が一日中しとしと続きます。傘をさすほどでもないのに、気づけば髪も心もじっとり湿っています。
日本から来たばかりの方が、この時期に急に元気をなくすのは珍しいことではありません。「なんだか朝起きられない」「理由もなく寂しい」「日本に帰りたい」。それはあなたが弱いからではなく、日照不足という物理的な理由がちゃんとあるのです。
でも安心してください。イギリス人は何百年もこの冬を生き抜いてきました。そして彼らは、暗い冬を楽しむ知恵をたくさん持っています。在英25年の私が、20代から70代まで、男性も女性も楽しめるイギリス冬のサバイバル術をお伝えします。
イギリス冬の「あるある」
暗い話ばかりでは滅入るので、まずはイギリスの冬の「ちょっと笑える」風景から。知っておくと、実際に遭遇したとき「来た来た!」と楽しめます。
11月になると、ラジオが24/7でクリスマス。 11月に入るか入らないかのうちに、ラジオ局がクリスマス専用チャンネルに切り替わり、朝から晩まで同じ定番曲が延々とループします。スーパーに行っても、カフェに入っても、同じ曲。12月中旬には、イギリス人自身も「もう勘弁して」と言い出します。でも、なぜかクリスマスが終わると少し寂しくなるのが不思議です。
ハロウィンの翌日にはもうクリスマス。 10月31日の夜に片付けられたカボチャの棚に、11月1日の朝にはミンスパイとサンタが並んでいます。季節の切り替えの速さは、日本のコンビニも顔負けです。
クリスマスCMは国民的イベント。 11月に入ると、大手デパートやスーパーがクリスマス用のテレビCMを一斉に公開します。新作が出るたびに「今年のは泣けた」「去年のほうが良かった」と、職場で真剣に議論されます。たかがCM、されどCM。
「クリスマス・ジャンパー」という正装。 トナカイや雪だるまの、わざとダサいセーターを着て出勤する日があります。会社の偉い人も、銀行員も、真顔で着ています。一枚持っておくと職場で一気に打ち解けられます。
クリスマス当日は国が止まる。 12月25日は電車もバスも基本的に全面運休。お店もほぼ閉まります。食料の買い出しを忘れた日本人が、25日に開いている店を探してさまようのは、もはや冬の風物詩です。
1月は「ドライ・ジャニュアリー」と「ヴィーガニュアリー」。 年末に飲みすぎ食べすぎた反動で、1月は禁酒や菜食に挑戦する人が続出します。そして2週間ほどで挫折する人も続出します。
生き残りの基本:体と心を守る5つの習慣
楽しみ方の前に、土台づくりです。これをやるかやらないかで、冬の気分がかなり変わります。
- ビタミンDを摂る。 イギリスの国民保健サービス(NHS)は、10月から3月ごろまで、ビタミンDのサプリを1日10マイクログラム摂ることを検討するよう勧めています。スーパーや薬局で安く買えます。持病のある方や服薬中の方は、念のため薬剤師さんに相談してください。
- 昼休みは絶対に外に出る。 明るい時間は貴重です。曇りでも、外の光は室内よりずっと明るいです。ランチ後に15分歩くだけでも違います。
- ライトセラピーのランプを使う。 朝、強い光を浴びるための専用ランプが手頃な値段で売られています。朝食をとりながら机に置いておくだけ。日の出を再現する目覚まし時計も人気です。
- 予定を先に入れてしまう。 冬は家にこもりがちです。週に一度は「外で誰かと会う予定」をカレンダーに入れましょう。予定があれば、人は意外と出かけます。
- つらい時は一人で抱えない。 気分の落ち込みが2週間以上続く、眠れない、食べられないといった時は、季節性の落ち込み(冬季うつ)の可能性もあります。かかりつけ医(GP)に相談できますし、日本語で話せる相談窓口もあります。我慢は美徳ではありません。
そして、服装も大事です。イギリスの冬は気温そのものより「湿った寒さ」がこたえます。防水のジャケット、厚手の靴下、帽子。この3つがあれば、雨の中の散歩もそれほど苦になりません。
食で楽しむ:冬こそイギリス料理がおいしい

「イギリスの食事はまずい」とよく言われますが、冬に限っては話が別です。イギリス料理は、寒くて暗い季節のために生まれたような料理ばかりなのです。
サンデーロースト。 日曜日のお昼に、ローストビーフやローストチキン、ローストポテト、ヨークシャープディングにグレイビーをたっぷり。暖炉のあるパブで食べるサンデーローストは、冬のイギリスで最高のご褒美です。人気店は予約が必要なので、週の半ばに押さえておきましょう。
パイとプディング。 ステーキ&エールパイ、シェパーズパイ、そしてデザートのスティッキー・トフィー・プディング。どれも重たいですが、外が真っ暗な午後5時に食べると、体の芯から温まります。
ミンスパイとマルドワイン。 ドライフルーツを詰めた小さなパイと、スパイスを入れて温めたワイン。クリスマスマーケットで両手に持って歩けば、気分はすっかりイギリス人です。お酒が苦手な方は、ホットアップルジュースもおすすめです。
クリスマスのチョコ缶。 12月になると、どの家庭にも大きな缶入りのチョコレートが置かれ、家族で好きな味を取り合います。最後に残る「誰も食べない味」が何かで盛り上がるのが、イギリス流の団らんです。
パンケーキ・デー。 2月か3月の「懺悔の火曜日」には、国中でクレープのような薄いパンケーキを焼きます。レモンと砂糖をかけるのが定番。地域によってはパンケーキを持って走るレースまであります。
日本の冬の味も忘れずに。 鍋、おでん、すき焼き。ロンドンなら日本食材店で材料がそろいます。イギリスの友達を招いて鍋パーティーをすれば、あなたが主役の冬イベントの出来上がりです。
文化・エンタメ:暗いからこそ、屋内が輝く

イギリスの冬は、劇場、パブ、美術館が一番いきいきする季節です。外が暗いぶん、明かりの灯った屋内がとても魅力的に見えます。
パントマイム(パント)を観る。 日本語の「パントマイム」とはまったく別物です。クリスマスシーズンに上演される、おとぎ話をもとにしたドタバタ喜劇で、女装したおばさん役が出てきたり、観客が「後ろ!後ろ!」と叫んだりと、まるで吉本新喜劇。英語が完璧でなくても笑えます。子ども連れにも、70代のご夫婦にもおすすめの、イギリス冬の大定番です。
ミュージカルとバレエ。 ロンドンのウエストエンドは冬でも満員。クリスマス時期にはバレエの『くるみ割り人形』が各地で上演されます。当日割引チケットやアプリの抽選を使えば、意外と安く観られます。
パブは冬の居間。 暖炉のそばの席を確保できたら、その日は勝ちです。平日の夜にはクイズナイトを開くパブも多く、知らない人とチームを組んで参加するのも楽しいものです。英語の勉強にもなります。
美術館・博物館は無料が多い。 ロンドンの大英博物館やナショナル・ギャラリーなど、主要な国立の美術館や博物館の多くは常設展が無料です。雨の日の居場所として最高です。夜間開館の日を狙えば、お酒を片手に展示を見られるイベントもあります。
家でぬくぬく「ヒュッゲ」。 北欧の言葉ですが、イギリスでも冬の過ごし方として定着しています。キャンドル、毛布、紅茶、そしてイギリスのドラマ。クリスマス特番のテレビをイギリス人と一緒に観ると、会話のネタにも困りません。
11月から2月のイベントカレンダー
実はこの4か月、イギリスはイベントだらけです。「次はこれがある」と思えるだけで、冬はぐっと短く感じられます。日程は年によって変わるので、行く前に必ず公式サイトで確認してください。
| 時期 | イベント | ひとこと |
|---|---|---|
| 11月5日前後 | ボンファイア・ナイト(ガイ・フォークス・ナイト) | 各地の公園で花火と焚き火。冬の幕開けを告げる行事 |
| 11月中旬の日曜日 | リメンバランス・サンデー | 赤いポピーを胸に。戦没者を追悼する静かな日 |
| 11月中旬〜下旬 | クリスマスのイルミネーション点灯式 | 繁華街や地元の商店街で。点灯の瞬間は小さなお祭り |
| 11月下旬〜12月 | クリスマスマーケット | ロンドン、バース、ウィンチェスター、マンチェスターなど各地で開催 |
| 11月下旬〜1月上旬 | ハイドパークのウィンター・ワンダーランド | 移動遊園地、スケート、屋台。若者にもファミリーにも人気 |
| 12月 | 職場のクリスマスパーティー | 通称「オフィス・パーティー」。翌朝の気まずさまでがセット |
| 12月26日 | ボクシング・デー | セールの開始とサッカーの試合。家族で散歩する人も多い |
| 12月31日 | 大晦日・ホグマネイ | ロンドンのテムズ川の花火(要チケット)、エディンバラの大規模な年越し祭り |
| 1月25日 | バーンズ・ナイト | スコットランドの詩人をしのび、ハギスとウイスキーを楽しむ夜 |
| 1月下旬〜2月 | 旧正月(春節)のお祝い | ロンドンのチャイナタウンを中心に獅子舞やパレード |
| 2月 | シックス・ネーションズ(ラグビー) | パブが一年で一番熱くなる時期のひとつ |
| 2月14日 | バレンタインデー | イギリスでは男性から女性へ贈ることも多い。日本とは逆の文化に驚くかも |
| 2月〜3月 | パンケーキ・デー | 国中でパンケーキを焼く日。レースを開く町も |
こうして並べると、ほぼ毎週何かしらあることが分かります。手帳に書き込んで、カウントダウンを楽しみましょう。
旅行:冬だからこそ行きたい場所

「冬は旅行のオフシーズン」と思われがちですが、実は観光客が少なく、宿も安く、冬ならではの景色に出会える穴場の季節です。ただし日が短いので、朝早く出発して、午後3時半には目的地に着いている計画を立てるのがコツです。
コッツウォルズで暖炉の宿に泊まる。 はちみつ色の石の村は、冬こそ絵本のよう。暖炉のある古いパブ兼宿に泊まり、夜はゆっくり食事。夏の混雑がうそのような静けさです。
バース、ヨーク、チェスターのクリスマスマーケット。 歴史ある街並みとクリスマスマーケットの組み合わせは格別です。日帰りもできますが、一泊すると夜のイルミネーションまで楽しめます。
エディンバラで年越し。 世界的に有名な年越しの祭り「ホグマネイ」は一度は体験したいイベント。寒さは本気なので、防寒は万全に。
スコットランド北部でオーロラを狙う。 条件がそろえば、スコットランド北部やシェトランド諸島でオーロラが見られることがあります。オーロラ予報アプリをチェックして、運試しをしてみてください。
海辺の冬散歩。 ブライトンやウィットステイブルなど、ロンドンから日帰りできる海辺の町は、冬の荒々しい海も魅力です。フィッシュ&チップスを食べて、また電車で帰る。それだけで心がリセットされます。
太陽を買いに行く。 どうしても限界なら、ヨーロッパ南部へ数日逃げるのも立派な戦略です。スペインのカナリア諸島、ポルトガル南部、マルタなどは冬でも暖かく、イギリスから格安航空で数時間。イギリス人も「太陽補給」のためによくやっています。
スポーツ:観て叫んで、動いて温まる

冬のイギリスは、スポーツ観戦の黄金期でもあります。そして体を動かすことは、冬の落ち込み対策としても効果的です。
サッカーのクリスマス連戦。 イングランドのプロサッカーは、ヨーロッパの多くの国と違って年末年始も休みません。ボクシング・デーの試合は家族で観に行く伝統行事です。チケットが取れなくても、パブの大画面で地元の人と一緒に叫べば十分楽しめます。
ダーツの世界選手権。 12月から年明けにかけて、ロンドンで開かれるダーツの世界選手権は、仮装した観客が歌って騒ぐお祭り状態。テレビで観ているだけでも笑えます。冬のイギリスで最も「イギリスらしい」スポーツ中継かもしれません。
ラグビーのシックス・ネーションズ。 2月から始まる欧州6か国の対抗戦。イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの「お隣さん同士の因縁」が絡むので、パブの盛り上がりは格別です。
競馬。 冬は障害競走のシーズン。12月26日前後のレースは大人気で、着飾って競馬場に行くのもイギリスらしい楽しみ方です。
自分でも動こう。 冬季限定の屋外アイススケートリンクが、博物館や城の前に登場します。土曜の朝には、全国の公園で無料の5キロのランニング・ウォーキングイベント「パークラン」が開かれていて、歩いて参加してもOK。年齢を問わず参加でき、終わった後のコーヒーで友達ができることもあります。屋内派なら、市民プールや体育館のヨガ、バドミントンもおすすめです。
趣味・習い事:冬は「始める」季節

イギリスでは、秋から冬にかけて新しい講座やサークルが一斉に始まります。冬を「何かを身につけた季節」にしてしまえば、春が来たときの達成感が違います。
地域の夜間講座。 各地のカレッジやコミュニティセンターでは、陶芸、写真、語学、料理など、大人向けの講座が手頃な料金で開かれています。イギリス人の友達ができる一番の近道かもしれません。
合唱団に入る。 12月はキャロル(クリスマスの賛美歌)の季節。地域の合唱団は新メンバーを歓迎していることが多く、楽譜が読めなくても参加できるグループもあります。教会でのコンサートに出演できたら、一生の思い出です。
編み物とお茶会。 カフェや図書館で、編み物好きが集まる会が開かれています。年配のイギリス人女性に教わりながら編むマフラーは、どこで買うものより温かいはずです。
ボードゲームカフェとパブクイズ。 若い世代を中心に、ボードゲームカフェが人気です。英語が苦手でも、ゲームのルールは世界共通。自然と会話が生まれます。
ボランティア。 フードバンクや慈善団体のお店(チャリティショップ)では、いつでもボランティアを募集しています。クリスマス時期は特に人手が必要です。誰かの役に立っている実感は、冬の落ち込みに対するとてもよい薬になります。
日本文化を教える側に回る。 書道、折り紙、日本料理、日本語。イギリスには日本に興味を持つ人がたくさんいます。教える立場になると、自分の居場所ができたように感じられるものです。
世代別おすすめ:20代から70代まで
ここまで紹介したものを、世代ごとにまとめてみました。もちろん男性も女性も、年齢に関係なく好きなものを選んでください。70代でダーツ観戦にハマってもいいし、20代で編み物を始めてもいいんです。
| 世代 | おすすめの過ごし方 | ジゴロッキーのひとこと |
|---|---|---|
| 20代 | ウィンター・ワンダーランド、パブクイズ、ボードゲームカフェ、格安航空で南ヨーロッパへ | 友達づくりの季節。誘われたら全部行くくらいでちょうどいい |
| 30代 | サンデーロースト巡り、ミュージカル、コッツウォルズの週末旅、パークラン | 仕事が忙しい世代こそ、週末の予定を先に入れて |
| 40代 | 家族でパントマイム、クリスマスマーケットの日帰り旅、サッカー観戦、夜間講座 | 子どもと一緒に「イギリスの冬の伝統」を体験するチャンス |
| 50代 | バレエやコンサート、海辺の町で一泊、合唱団、ワインやウイスキーの講座 | 少し贅沢に、大人の冬を味わう年代 |
| 60代 | 美術館の平日巡り、競馬、編み物の会、ボランティア、カナリア諸島で長期滞在 | 時間に余裕があるなら、冬の一部を南で過ごすのもイギリス流 |
| 70代 | パントマイム、教会のキャロルコンサート、午後のお茶会、ご近所とのクリスマスカード交換 | 寒さと転倒には注意しつつ、明るい時間に外出を |
男女で分けるなら、パブでのスポーツ観戦は男性が多めに見えますが、最近は女性同士のグループも普通にいます。クリスマスマーケットやアフタヌーンティーも、男性一人でまったく問題ありません。イギリスは「好きなことを好きにやる」に寛容な国です。
おわりに:冬至を過ぎれば、光は戻ってくる

12月21日ごろの冬至を過ぎると、日は毎日少しずつ長くなります。1月の終わりには「あれ、まだ明るい」と思う夕方がやってきて、2月にはスノードロップという白い小さな花が咲き始めます。イギリス人はこの花を見ると、心からほっとした顔をします。
暗黒の4か月は、確かに長いです。でも、ここで紹介したように、イギリスの冬には冬にしかない楽しみがたくさんあります。ラジオから流れる何百回目かのクリスマスソングに苦笑いしながら、ミンスパイをかじり、パブの暖炉で温まり、パントマイムで大声を出す。気づけば春です。
そして、最初の冬を乗り越えたあなたは、もう立派な「イギリスの住人」です。2回目の冬は、きっと少し楽しみになっているはずですよ。
それでは皆さん、暖かくして、よい冬を。
いつもお読みいただいてありがとうございます。ブログ・ランキングに参加していますので、下のひつじちゃんをクリックして応援よろしくお願いします
下の猿ちゃんもクリックして応援よろしくお願いします
人気ブログランキング
アクセスランキング にほんブログ村
Share This Story, Choose Your Platform!
Category
Latest Posts

‘ふわりいぎりす’は、イギリスにいる日本人ライターたちが気が付いたこと、発見したこと、知っていること、思ったこと、教えたいこと、気になることなど、ちょっとだけお伝えするウェブマガジンです。




